生活支援相談員のみなさんへ~まとめにかえて | はあとふる・ふくしま

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生活支援相談員のみなさんへ~まとめにかえて

悩むことの意味

 生活支援相談員として仕事を始めたとき、ほとんどの方は「何をやったらいいのかわからない」「自分の役割がつかめない」と悩まれたのではないでしょうか。望む人のところだけ訪問するわけではありませんから、怪しまれたり、うっとうしがられたりすることも多かったでしょう。また、生活支援相談員は、介護や家事援助などの具体的なサービスを提供するわけではありませんから、「何をしてくれるのか?」との問いに対し、「このサービスを提供します」と言えないジレンマにも直面したことでしょう。

 しかし、振り返ってみると、この悩みやジレンマにこそ、「支援」の大きな意味があったのだと思います。つまり、「自分は何をするのか」よりも「相手は何を求めているのか」を考えざるを得なかったということです。主語は、自分ではなく相手にある。これが“寄り添う”ということではないでしょうか。研修などでさかんに“寄り添う”というキーワードを聞かれたと思いますが、みなさんが悩んだこと、それこそが“寄り添う”姿勢の第一歩だったのだと思います。

出向くこと(アウトリーチ)の意味

 「自分が提供できるサービス」からスタートするのではなく、「相手が必要としていること」から見ていこうとすると、まず、じっくり話を聴くことから始めなければなりません。それも一回では足りません。晴れの日も雨の日も、また真夏日も雪の日も何度も訪問する中で、徐々に信頼関係を作り、その上でようやく話をしてくれることもあります。ちょっとした雑談が大きな意味を持つこともあるでしょう。これほど継続して訪問し、お話を聴くという職種は他にはあまり見当たりません。その姿は、人々に「安心」を与えていきます。「何かあったら、あの人に相談すればいい」と思えること、それがどれだけ不安を軽くすることか。

 また、出向くことで、一人ひとりの様子だけでなく、その人を取り巻く環境、仮設住宅全体の状況の変化もわかってきます。それらを踏まえることで、よりニーズにあった企画を集会所などで展開していくことができるのです。

コーディネーターとしての意味

 さらに、「相手が必要としていること」に対応しようとすると、そのつど、さまざまな人や機関・サービスが必要になるでしょう。そこで、生活支援相談員は、コーディネーターとしての役割を発揮します。福祉関係をはじめさまざまな行政部署、専門機関、民間サービス、また親族、近隣、ボランティア、地域団体、NPOなどとの調整も行います。ある特定の分野、ある特定のサービスを提供する役割ではないからこそ、多様な人や団体、サービスをつなぎ、それらの連携を生み出そうという視点が冴えるのだと思います。

 また、第2章の事例を見てもわかるように、コーディネーション力は、個人をめぐるものだけでなく、グループとグループ、仮設住宅と仮設住宅、あるいは地域(避難元)と地域(避難先)をつなぐというように広がっていきます。

生活支援相談員という存在

 文化人類学者の上田紀行氏は、スリランカでの滞在/研究を背景にして日本で最初に「癒し」という言葉を広めた方として知られています。最近は「癒し」ばやりで、すぐにアロマとか温泉など個人で行うことが思い浮かびますが、上田氏によれば、<真の癒し>とは、みんなが相互に助け合うなかで、絆を確認し、「自分は一人ではないんだ」と安心することだと言います。

 生活支援相談員の存在は、仮設住宅や借り上げ住宅に避難されている方々が「自分は一人ではないんだ」と実感できる最初の扉ではないでしょうか。そして、生活支援相談員はその働きかけや企画を通して、避難されている方がいろいろな人に出会い、相互に助け合う関係を築き、さらに「自分は一人ではないんだ」という思いを強くしていくことを支えているのだと思います。


以上は、本ハンドブック作成やこれまでの研修を通して、多くの生活支援相談員のみなさんにお話をうかがって、改めて私が深く思ったことです。
生活支援相談員のみなさん。みなさんが果たしている役割は、おそらくみなさんが思っているよりも、ずっとずっと大きい。これからも、大変なことや悩むことはたくさん出てくるでしょうが、素敵な笑顔でその一歩を!


(筒井のり子)

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