大規模災害と取り残された障がい者~個人情報”保護”の壁~ | はあとふる・ふくしま

loader
はあとふる・ふくしま
避難者への生活支援とボランティア活動を伝えます

大規模災害と取り残された障がい者~個人情報”保護”の壁~

コラム
生活支援相談員の多くがぶつかった個人情報保護と救命・救援をめぐるジレンマ。
“平時にこそ”やらねばならないことを教えてくれたあるエピソードを紹介します。
大規模災害と取り残された障がい者
~個人情報“保護”の壁~
 私たちは、南相馬市で障がい者の日中活動を支援する事業所3カ所を運営しています。震災当日は開所中で全ての仲間が無事でした。

 原発事故について情報は入ったのですが、遠いところの事故という感覚で、安否確認を続けていました。13日にはじめて20㎞圏内全員に避難指示があったことを知りました。30㎞圏内は「屋内退避」となりましたが、じっとしていられず、多くの住民は避難しました。35㎞の検問から中に人が入ることが出来なくなり、物資が枯渇しました。入院患者、施設の入所者も避難しましたが、民間のバスや自衛隊のトラックによる長時間の移動は過酷で、避難中・避難後に多くの方が亡くなっています。

 市は17日19時に市民に「遠くに避難をして欲しい」と通告しました。これにより翌日以降、ほとんどの人が避難をしたはずでしたが、約1万人が残ったと言われています。その中には、避難所での生活が困難な高齢者、障がい児者、その家族がいました。仲間も多く残っていたので、私と2人の職員で一軒ずつ状況確認しました。10人以上が残っていて、物資の手配、介護などの支援が必要でした。この時、他の障がい者たちの状況や支援者の存在が心配になりました。

 市に対して、障がい者の安否確認、生活支援につなげるために個人情報の開示を要求しました。2011(平成23)年1月に市は「災害時要援護者リスト」を完成していたので、情報が開示されれば、障がい者を支援できる可能性がありました。しかし、個人情報のため開示できないと、断られました。このリストの作成過程を確認したところ、市が選定した要援護者のうち承諾した人が載っている「手挙げ方式」だったことが判明しました。また、洪水等を想定していて、介護度や障害程度区分が重度の方を対象としていました。「要援護者」は災害規模や環境によって変化します。残念ながらリストは開示されても役に立ちませんでした。

 ひとりも漏らさないためには、「障がい者手帳情報」の開示が必要でした。個人情報保護条例に「災害時等において、人の生命、身体又は財産を保護するため、緊急かつやむを得ないと認められるときは本人の承諾を得なくても個人情報を開示出来る」とあります。これを元に開示の可否を福祉部長を通じて確認頂いたところ、開示可能との回答を得ましたが、さらに「個人情報保護審査会」にて開示請求者調査、開示内容の精査、開示目的妥当性について審査が必要でした。委員も避難している中、会合を開けるとは思えませんでした。もう時間をかける余裕はありません。最終的に、市長の専権で開示していただきました。

 情報をもとに、関係者と共に調査、支援を進めました。65歳以下の障がい者1,140名の内、2011(平成23)年8月末現在492人が在宅していました。半数近くが残り、あるいは戻っていたのです。情報が開示されず支援が出来なかったら、多くの方が困難な状況に陥っていたことは間違いありません。

 緊急時の個人情報開示は困難やリスクを伴います。しかし、これらを超えなければ、生命を救うことはできません。平時から取り扱いを決めておかなければならないことを学びました。災害時、高齢者、障がい者、子どもたちを誰がどう守るべきか、何が必要なのか。今から対策を進めなければならないと思います。


(青田由幸)

ハンドブック内検索


ハンドブック目次


ハンドブックPDF