事例4 避難側、受け入れ側、双方の参加力を引き出す | はあとふる・ふくしま

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避難者への生活支援とボランティア活動を伝えます

事例4 避難側、受け入れ側、双方の参加力を引き出す

桑折町避難側、受け入れ側、
双方の参加力を引き出す

NPO、社会福祉協議会(以下、社協)、
応急仮設住宅の自治会が避難元の浪江町、避難先の桑折町、
避難先周辺の社会資源、まちづくり活動と連携。
避難側と受け入れ側、互いの参加力を引き出しながら
復興と地域再生、生活再建に取り組んできた事例
伊達郡桑折町の避難の状況と市内居住の状況
桑折町の人口…12,651人(平成25年1月1日現在)
※桑折町HPより
平成25年2月19日現在の避難の状況
※桑折町社会福祉協議会が確認している数字のみ
●自罹災住民 仮設住宅入居者数…………………31人
●避難住民(仮設住宅入居者数)…………………382人
(借り上げ住宅入居者数)……………… 47人

ストーリー


桑折駅前仮設住宅自治会の設立を支援
避難側と受け入れ側の力を引き出す仕組みも設立

発災直後からNPO法人市民公益活動パートナーズ(以下:パートナーズ)は、中間支援組織らしい復興支援活動をしたいと情報収集を続けました。そのなかで福島県内第2号となる応急仮設住宅が伊達郡桑折町に完成し、2011(平成23)年5月から浪江町のみなさんが入居するという情報をいち早くキャッチしました。

「避難所から仮設住宅へと支援が移行していく時に求められるのは、地域のコミュニティの編み直しだろうと考えました。そこで、福島県の補助を受け地域と人をつなぐコーディネーターを育てる研修を企画して募集しました」と古山郁さん(パートナーズ代表理事)。

桑折町駅前応急仮設住宅の集会所に貼り出された人材募集のチラシを見て電話をかけたのが八島妃彩さん(桑折町駅前応急仮設住宅自治会役員)です。

「『どんな仕事をするのですか?』と聞くと『人と人を繋ぐ仕事です』というお返事でした。ちょうど仮設住宅の自治会を立ち上げたいと思っていたところでしたので、支援をお願いすると快く引き受けてくださいました」

それから1カ月後の同年8月、同仮設住宅に自治会が誕生しました。さらにその翌月、避難側・受け入れ側、双方の力を引き出す仕組み「伊達桑折×双葉浪江=交流と賑わいづくり応援プロジェクト連絡協議会」も設立され、これからの活動を力強く支える支援体制が整いました。パートナーズが事務局を務める同連絡協議会には、桑折町、浪江町、浪江町社協、近隣のNPO法人、そして出来たばかりの同自治会も構成メンバーとして名前を連ねました。

「体制が整うと桑折町のみなさん、仮設住宅や町内の借り上げ住宅に暮らす浪江町の皆さんとの交流事業や生活再建支援のための勉強会など、人と地域をつなぐ催し物が次々と開催されるようになりました」と古山さん。

もともと地域づくり活動が盛んな桑折町には、女性団体連絡協議会が運営する「桑折御蔵」と東北大学都市まちづくり研究会の学生達による読書カフェ『まゆたま』という2つの交流拠点があります。そうした社会資源と人のつながりをフルに活用して桑折町と浪江町の『まちじまん交流会』を開いたり、地元の歴史家の案内で浪江町の皆さんが避難先の名所旧跡を訪ね歩く『桑折学ちょこっと散歩』を開催したり、支援情報や同連絡協議会の催事案内を届ける『おたがいさま新聞』の発行もスタートしました。

Point
かなり早くから「自治会を作りたい」という声が入居者からあがっていたところへ、中間支援のNPOが関わって情報提供等を行ったことで、よりスムーズに設立。また、発足当初、借り上げ住宅にお住まいだった浪江町の民生委員にも会議に入ってもらっていたことから、この仮設住宅の集会所は、借り上げ住宅の入居者も利用できるようになっているそうです。孤立しがちな借り上げ住宅の入居者も集会所のサロンなどに参加され、つながりが生まれています。

Point
震災前から地域にあった2つの交流拠点をうまく生かして、仮設住宅で暮らす浪江町の住民と桑折町住民との交流を企画されました。改めて、平常時から「地域づくり」に熱心に取り組むことの重要性がわかります。こうした地域の社会資源を把握し、うまく生かして企画を立てるセンスは、支援者にとって大事なポイントです。

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浪江町の皆さんと桑折町を中心とした県北の各地域とをつなぐ情報紙「おたがいさま新聞」

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桑折町の歴史家の案内で避難先の名所旧跡を訪ね歩く「桑折学ちょこっと散歩」

つるし雛づくりをきっかけに誕生。小商い塾を経て
ひとり立ちした「コスモス手づくりの会」

地域と人をつなぐさまざまな事業に参加していくなかで着実に力をつけ、自立したのが浪江町のお母さん達による「コスモス手づくりの会」です。きっかけは、2011(平成23)年12月に「桑折御蔵」から届いた「一緒につるし雛を作りましょう」というお誘いでした。有志が集まり500個のつるし雛を作り、翌年2月11日から3月4日まで開催された「桑折宿雛めぐり」に参加しました。その後も趣味で布小物を作り続けていると「支援をいただいたお礼につるし雛を送りたいので譲ってほしい」と言われることが増えました。

「当時、食べ物は風評被害もあり布小物なら大丈夫という思いがあっての依頼でした。純粋なやりとりを誤解され『集会所で作ったものをお金でやりとりしている』というような話がひとり歩きしてしまっては困るという相談を受け、『それでは』と浪江町のお母さん達のために地域活動を仕事として取り組む方法を知る『小商い応援塾』を開催しました」

2011(平成23)年の暮れから5回連続で開催した「小商い応援塾」では、地域の居場所づくりに取り組んでいるNPO法人まごころサービス福島センターやNPO法人いいざかサポーターズクラブなどを訪ねて運営方法を学びました。

「集会所は、パブリックなスペースですからね。そうした空間を使って活動するときは、それなりの手順を踏む必要があるんですよね」

小商い応援塾で実践を積んだみなさんは、会を継続的に運営していくために作ったものを販売し収益を運営や材料の仕入れに充てるなどの会則を作りました。口座も開設し、自治会の許可を得て同年3月に「コスモス手づくりの会」を立ち上げ、活動をスタートさせました。

「お母さん達の活動はとても順調です。現在は、毎月第4日曜日に開催される桑折宿軽トラ市や県外避難をしている知り合いの仲介で草津温泉のお土産品売り場で『縁起もの』として作品を展示販売しています」

桑折駅前応急仮設住宅では、ほかにも「浪江花の会」や浪江町の民話と伝承と震災の記憶を残すための紙芝居を届けながら県北地域に点在する浪江町民をつなぐ活動など、新しい地域活動が次々に生まれ活動をしています。

「『おたがいさま新聞』も平成24年度から配布の範囲を広げました。さらに広く多くの皆さんと情報を共有して県北地方のにぎわいづくりをつないで、住民同士が行き交いながら取り組むまちづくりを応援していきたいと思っています」

Point
仮設住宅には、外からさまざまな団体がやって来て、支援を提供してくれます。しかし避難している方々の中にも、いろいろな特技や経験を持っている方がたくさんおられます。支援を「受ける」だけでなく、自分たちの中から活動やグループを生み出していくお手伝いをするのも支援者の大切な役割です。

Point
被災・避難されている方自身の活動にはいろいろなタイプがあります。趣味の集まり、健康づくり、ボランティア活動、あるいは、仕事(収入)につなげていくようなものもあります。関心やねらいによって、それぞれ参考になるような事例(活動内容や団体)を紹介したりすることも必要になるかもしれません。

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「桑折宿雛めぐり」に向けて雛飾りを作る浪江町のお母さん達

「みんなが被災者」という気づきを力に
人、物資、地域を縦横無尽につなぐ桑折町社協スタイル

一方、桑折町社協の取り組みは、仮設住宅への入居が進むなか避難先社協としてどのような支援の在り方がいいのか模索することから始まりました。

「ある時、福島県民は、みんな何らかのストレスを抱えている。県外で暮らす人、県内で暮らす人、みんなそれぞれに辛い思いをしている。みんなが被災者なんだと気づいたら肩の力が抜けました」と角田由美子さん(桑折町社協ボランティアコーディネーター)。

「良い支援であるなら、それは誰がやってもいいことではないか」と思い始めたとたんいつものスタイルが戻ってきたそうです。仮設住宅の集会所で月2回開催しているサロンは、初めに浪江町社協の生活支援相談員と一緒に自治会の役員会に参加し、自治会主催で両社協が支援して行くことで合意しました。

「実際の運営は両社協の生活支援相談員が中心となっていますが、自治会主催ということで、役員や民生委員のみなさんの協力もあり、食材やお茶菓子が届くこともあります。桑折町社協は、以前からサロン事業に積極的に取り組んでいたので、仮設住宅でのサロンもその延長線上にあるという位置づけです。毎回30名〜40名の参加者がありますが、血圧測定には桑折町ボランティアセンターに登録している看護師の資格のある方に来ていただいています。ほかにも地元の病院の出前講座などをサロンに組み合わせて、避難生活での健康リスク軽減を図るなど縦横無尽につなぐのが桑折町社協のスタイルです」

支援物資の活用の仕方も振るっていました。桑折駅前応急仮設住宅は、ほとんどが高齢者。スポーツ用のジャージもLサイズ以外は、残ってしまうのが悩みでした。

「余っている支援物資をどうにかしたいと社協に相談すると、『桑折宿復興大市』でバザーを開いて収益を自治会に寄付するというやり方なら問題ないのでは』ということになりました。なるほどと思いました」と八島さん。

2012(平成24)年秋には、「高齢者とのふれあい」をテーマに、桑折町の小学生と仮設住宅のサロンとつないで楽しい時間を過ごしました。

「こういう時は、事前の仕掛けが大事です。まず、長くボランティア活動の勉強を続けてきた小学6年生に『仮設住宅を調べよう』というテーマで授業を行いました。次に浪江町の方が作った『何故この仮設住宅に避難することになったのか』を描いた紙芝居を見た後、空いている仮設住宅と実際に暮らしている住宅を見せてもらうなど、理解を深めてから参加するという手順を踏みました。ちょうど学習発表会が間近だったこともあって、完成度の高い子どもたちの歌やダンスに浪江町のみなさんも大盛り上がり。しかも翌日、子どもたちから学習発表会の招待状が届いてみなさんまたまた大喜びでした」と角田さん。

サロン活動の中から生まれた浪江町の女性達による調理ボランティアのグループ「ピーチピーチ」も桑折町社協がグループ結成のための支援をしました。毎回サロンのお手伝いをしている皆さんを見ていてひらめいたそうです。

「調理のボランティアグループができれば、地元の農家さんが届けてくださる野菜の差し入れや、各家庭で食べきれないレトルトや缶詰などの支援物資を集めてサロンの昼食を作ったり、ちょこっと散歩におにぎりを作って届けたり、自治会で開催する自分たちのイベントの時も力を発揮できると思いました」と、大島貴子さん(桑折町社協生活支援相談員)。

避難元の浪江町社協の生活支援相談員との連携、借り上げ住宅の支援も検討しながら現在のスタイルを作り上げました。

「当初、避難先と避難元はいつも一緒に行動しなければならないという気持ちがありましたが、浪江町社協との協議の結果、戸別訪問は浪江町社協で行うことになりました。戸別訪問を行わないと情報が得られないという心配もありましたが桑折町には仮設が1カ所。桑折町社協配置の生活支援相談員も私一人ですので、活動しているなかで得た情報で動けばいいと割り切るようにしました。浪江町社協の生活支援相談員のみなさんとは、週1回情報交換の場を設けて情報を共有するようにしています」

Point
仮設住宅や借り上げ住宅に暮らしている方のみの支援と考えると、「避難先」単独では取り組みにくいです。しかし、視野を広げて「このまちに避難して来ている人すべて」(複数の町村、親戚を頼って来ている人も)を対象と考えると、住民の福祉を推進する社協としていろいろな展開ができそうです。

Point
「支援物資」の扱いで、頭を抱えることも多いのでは。仮設住宅単位では対処しにくいことも、社協のボランティアセンターが関わることで、より柔軟に対応できることがわかります。

Point
「つなぐ」とは、単に日程調整をして来てもらうということではありません。小学生と仮設住宅の方とのよりよい出会いとなるように、まず相手への理解を深め、関心をもって来てもらうように、ていねいにアプローチをしています。

Point
仮設住宅の入居者の中からボランティアグループが生まれるというのは素敵ですね。仮設住宅内でのイベント等で必要となる「調理」(ニーズ)と、「料理が好き」という方々(ボランティア)をうまくつなげています。こうしたグループの立ち上げ支援は、これからますます求められる役割です。

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桑折駅前応急仮設住宅の集会所で毎月2回開催されているサロン

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調理ボランティア「ピーチピーチ」の活動の様子

サロン活動に男性の参加を促す
新しい事業にもチャレンジ

また、桑折町社協では、これまでにないチャレンジもしています。それが復興も含めた地域福祉という広い視点でとらえた「いきいき健康マージャンの集い」です。桑折町は高齢化率がもともと31%と高く、介護予防という意味からも引きこもりがちな男性をボランティアやサロン活動に呼び込む何かが必要と考えていました。震災後、数年前から打診していた「NPO法人健康麻将(マージャン)全国会」に連絡すると「被災者支援をしたいと考えていたところです」という返事をいただきました。トントンと話が進み2012(平成24)年6月12日・13日、謝金や交通費など一切無料の講師派遣で「健康マージャン地域指導員養成講座」を開催しました。当日は、町内から16名が参加され、講座を修了されたみなさんがボランティアグループを結成。同年8月から仮設住宅の集会所で「いきいき健康マージャンの集い」を開催しています。

健康マージャンをきっかけに、避難生活で家に閉じこもりがちな高齢者や引きこもりの男性などが集会所に出てくるようになり、ご本人が開催を楽しみに待つようになっただけでなく、家族の方にも感謝の声をいただいています。さらに仮設住宅の方々が自主的にマージャンの会を開催するようにもなってきています。健康マージャンは、桑折町民と仮設住宅のみなさんの交流という意味も含めて、これからも継続してく予定です。

Point
「男性の参加が少ない」というのは、平常時のサロンでも仮設住宅のサロンでも同じ悩みです。各地でいろいろな工夫がなされていますが、「健康マージャン」というのもおもしろい視点です。また、桑折町(避難先)の住民がまず講習を受けて、指導員として仮設住宅の集会所で活動するという「仕掛け」もヒントになります。

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「いきいき健康マージャンのつどい」を告知するチラシ

取材協力・写真提供:
NPO法人市民公益活動パートナーズ、社会福祉法人桑折町社会福祉協議会、桑折駅前応急仮設住宅自治会


まとめ
本事例は、他の町からの避難者を別枠で支援するという発想ではなく、「まちづくり」あるいは「地域福祉推進」というより大きな視点で取り組まれているところが特徴です。避難している浪江町の方への支援活動が、実は桑折町の住民や地域の活性化にもつながっていく仕掛け。また、支援を受けている浪江町の方々の中から、今度はボランティアグループなどが生まれていくアプローチなど、多くのヒントをもらえます。

(筒井のり子)

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