事例3 避難者同士の一体感を高め避難先になじむ仕掛け | はあとふる・ふくしま

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避難者への生活支援とボランティア活動を伝えます

事例3 避難者同士の一体感を高め避難先になじむ仕掛け

いわき市避難者同士の一体感を高め
避難先になじむ仕掛け

長期滞在して支援を続けているNGOの企画と
生活支援相談員の連携で避難生活を続ける双葉郡のみなさんが
「平(たいら)七夕まつり」に参加。浜風に揺れる手作りの笹飾りが
いわき市民、双葉郡の住民も楽しませ、
さらには互いの存在を受け入れ打ち解けるきっかけに。
感謝と達成感から明日の元気、来年の希望も生まれた事例。
いわき市の避難の状況と市内居住の状況
いわき市の人口 329,574人[2013(平成25)年2月1日現在]
※いわき市HPより
2013(平成25)年2月21日現在の避難の状況
●自罹災住民(仮設・借り上げ住宅等入居者数)……計4,404人
●避難住民(仮設住宅入居者数) …………………… 計7,193人
 ※上記の数字に借り上げ住宅、
  公営住宅等入居者数は含まれておりません。
※福島県HPより

ストーリー


大震災と原発事故から1年2カ月
今こそ心と心をつなぐ何かが必要

 いわき市には、地震と津波、原発事故によって双葉郡から避難を余儀なくされたみなさんが応急仮設住宅や民間借り上げ住宅に、2012(平成24年)9月現在で約2万3,000人暮らしています。

 「取り残された人々を支援する」をキーワードに活動している国際協力NGO「シャプラニール」は、2011(平成23)年3月下旬からいわき市に拠点を置き全国から届く支援物資の配送などの活動を続けました。同年10月には、誰でも気軽に立ち寄って話ができる「交流スペースぶらっと」を開設。健康チェックや書道、手芸などの教室に訪れる人の会話を通してスタッフは、双葉郡からの避難者といわき市民との間に気持ちのずれがあることを感じていました。

 ここで改めて震災から1年2カ月が過ぎた2012(平成24)年初夏の頃をふり返ってみると、仮設住宅や借り上げ住宅への引っ越しが済み、慌ただしく新年を迎えて春が過ぎ夏が近づき出した頃。支援や補償の格差が少しずつ表面化し始め、避難生活のがまんなども加わり、人間関係のぎくしゃくが見え隠れし始めていました。

 平七夕まつり実行委員会のメンバーから「いわき市に多くの方が避難しているので、七夕まつりに参加してもらえれば」というアイディアを聞きシャプラニールのスタッフは「ぜひ、実現したい」と考えました。双葉郡5町の役場や社協、仮設住宅の自治会、浪江町の有志のみなさん、いわき市社協に呼びかけると、みなさんから参加したいという回答がありました。折り紙や材料費などの必要経費は、同年2月に行われた日本経団連主催の企業CSR担当者の被災地ツアーで知り合った(株)JXホールディングスの担当者から「何かお手伝いできることがあれば」と言われていたことを思い出し、相談すると快く引き受けてくださいました。

Point
 特別の目的がなくても「気軽に立ち寄って話ができる場」があることは、私たちの暮らしに安心とゆとりをもたらします。避難して来た方にとってはなおさらでしょう。そこでの何気ない会話や様子から、状況の変化やニーズを感じ取るセンスも大切です。

Point
 避難されている方を「七夕まつりにご招待」ではなく、「参加」してもらおうという視点が重要なポイント。笹飾りを作り飾ることで、いわき市で暮らす一員という意識が高まり、またそれを見てもらうことでいわき市民との交流のきっかけになるのではというねらいがあったそうです。

Point
 もともとつながりのあった一部の避難者だけで進めた方が簡単だったでしょうが、あえて幅広く参加を呼びかけたことの意義は大きかったと思われます。

Point
 何かを実行しようとすると、その「資金」が必要に。助成金の情報を得たり、「資金面で応援したい」という人・企業などとコーディネートすることも、支援者に求められる役割の一つです。

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シャプラニールがいわき市内で運営している「交流スペースぶらっと」

これからのことを考えると不安で涙がこぼれてくる
ならば何でもやってみようと参加を決めました

 同年5月26日と6月30日と2回にわたって開催された七夕飾り作り講習会には、参加を決めた双葉郡6町といわき市社協のみなさん合わせて約60人が参加しました。大熊町社協生活支援相談員の和田尚子さんに参加を決めたきっかけを伺うと、

 「当時、仮設住宅や借り上げ住宅を訪ねると、『春を迎えても何もすることがなく、これからのことを考えると涙がこぼれる』というようなお話をあちらこちらで聞いていました。リーダーになってくれそうな登録ボランティアの方々の顔がパッと浮かんだので、とにかく何でもやってみようと思い、参加を決めました」と話してくださいました。

 参加するに当たって和田さんは、好間工業団地、鹿島町、渡辺町にある仮設住宅の自治会長に話をして住民のみなさんに連絡。並行して大熊町社協にボランティア登録をしていた近尚子さん、田子島屋邦子さん、渡部布子さんにも経緯を説明しました。すると「ちょうど何かしたいと思っていたところだった」というなんとも頼もしい返事。「それでは!」と、みんなで講習会に出かけました。

Point
 支援者は、仮設住宅で暮らす方々の困りごとや援助が必要なことなどを把握する一方、一人ひとりが元々持っている力(得意なことや関心、願望)にも注目していくことが大切。すでにボランティアの登録を行っていたこと、そしてリーダーになってくれそうな方の「顔がパッと浮かんだ」のは素敵ですね。

固定化しつつあったサロンに
新しい風を吹かせた七夕飾りづくり

 講習会直後から七夕飾りづくりは、大熊町の仮設住宅で暮らすみなさんの最大の目標となりました。毎週集会所で開催していた『健康サロン』の内容を変更。

 「木曜と金曜の午前でも午後でも自由に参加できることを皆さんに伝えました。借り上げ住宅も1軒ずつまわって呼びかけました」

 制作拠点は、好間工業団地の第2仮設の集会所にして、第1仮設のみなさんには、第2仮設まで歩いて通っていただくことにしました。鹿島町と渡辺町にある仮設住宅の集会所でも制作開始の狼煙を上げ、3人のボランティアリーダーを中心に作業を進めました。

 「当時を振り返るとお花紙で作る花の形が揃わなかったり、7,000羽必要な折り鶴が間に合わなくて週2回の集まりを週3回にしても間に合わず週4回に増やしたり、夢にまで見るほどいろいろありました(笑)」

 うれしい出来事もありました。会津若松市の仮設住宅で暮らす大熊町町民は、行政区ごとに入居しました。一方、いわき市で暮らす大熊町町民の場合は、バラバラに入居したのでどこに誰が暮らしているか分からない状況でした。

 「それが、七夕飾りづくりが始まると固定化されつつあったサロンに新しい仲間が参加するようになり一緒にいろんな情報が入ってくるようになったんです」

 また、花を折ったり鶴を折ったりするシンプルな作業は、子どもから高齢者まで誰でもできることから、なかには自宅に持ち帰って折ってきてくださる方も現れました。

 「持ち帰れば、集会所に来れない人も七夕まつりに関われます。完成した笹飾りを会場まで見に行く楽しみも生まれます」

 約2カ月間で延べ500人が参加して、3本の大きな七夕飾りができたときは、みなさん達成感で胸がいっぱいになったそうです。

Point
 すでに仮設住宅の集会所で「サロン」を開催していたため、スムーズに笹飾りづくりに取り組めたものと思われます。また、借り上げ住宅を1軒ずつ訪問するという、ていねいな声かけがなされました。多くの人が参加した背景には、こうした地道な取組みがあるのです。

Point
 結果ですが、笹飾りを作るようになってからサロンに新しい参加者が増えたとのこと。適宜、新たな活動プログラム(内容)を取り入れることの大切さがわかります。

Point
 子どもから高齢者まで、集会所に来られる人も来られない人も、なるべく多くの人に参加してもらいたい、という思いがあったことがわかります。ただ集まるのではなく、何か「具体的な作業」があった方が参加しやすいというのもヒントになりますね。

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おしゃべりしながら手も動かして吹き流しづくり。色の順番間違えないでね

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出来上がった飾りを梁に吊り下げる男性

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いわき市内の仮設住宅の状況

「笹飾りコンテスト」で特別賞を受賞
達成感がより一層強いものに

 祭り本番、双葉郡6町といわき市社協、交流スペースぶらっと(シャプラニール)の七夕飾りが商店街のみなさんの協力を得て目抜き通りに設置されました。期間中は、自分たちで作った飾りを見ようと出かけた人たちが会場にあふれました。

 「なかには電車の発車時刻を調べて集会所の壁に貼り出し、みんなで集まって七夕まつりを見に行った仮設住宅もありました。会場では、双葉6町の飾りを立ち止まってじっくり見てくださる観光客の方もいらして参加して本当に良かったと思いました」

 今回の企画が成功した要因を考えてみると、1つ目にシャプラニールが全てを仕切るのではなく、ある程度枠組みを決めた後、それぞれの団体に任せたことがあるように思われます。

 「自治会長も本気。『参加するからには、ちゃんとしたものを作ってほしい』と言ってましたので、とにかくみんなで力を合わせてがんばりました。協働で作り上げた祭りの喜びを、観光でいらした方も含めて大勢の方と分かち合えたことも良かったと思っています。心が広くなり、垣根を越えて打ち解け合えたように思います」

 2つ目は、「笹飾りコンテスト」表彰式で双葉郡6町といわき市社協、交流スペースぶらっとに贈られた特別賞です。連絡を受けて「粋なことをするな」と思ったという和田さん。

 「本当に思いがけないギフトでみんなの達成感がより一層強いものになったように思います。『この町で一緒に暮らして行こう』というメッセージのようにも感じられました。受け入れてもらえたという喜びをみんなで噛みしめました。祭りの後の懇親会も楽しい時間でした。つながりを太くできました」

Point
 複数の人や組織が協働して何かを実施していくときの大きなポイントは、それぞれがその企画の「当事者」になること。すなわち、「自分(達)が知恵を出し、頑張らないといいものができない」という意識を持つことです。そのために、コーディネーターは、あえて「ゆだねる」、「任せる」こともとても大事なのです。そうすることによって、創意工夫する楽しみと、同時に責任感も生まれます。

ばらばらになりかけた心を繋いでくれた
七夕飾り。来年もぜひ参加したい!

 祭りが終わって『来年も参加したい!』という声がみなさんから上がった時も取り組んでよかったと思ったそうです。

 「確かに大変な日々でしたが、みんなで一つになって夢中で走り続けた2カ月が、どんなに楽しかったかという証ですよね」

 大きな仕事をやり遂げたという事実が自信になり「いつまでも頼っていてはいけないよね」という雰囲気が高まり手芸クラブも生まれました。次回は、七夕飾りだけでなく最終日の「いわき踊り」にも参加したいという声も出ていて、みなさんのやる気をどのように支援していくか思案中とのこと。

 ところで、苦労して作り上げた七夕飾りのその後も気になりますよね。いわき市社協の草野淳さんに伺うと、「一生懸命作った飾りへの愛着は、どの町もひとしお。みなさん保管しておいて大きなイベントのときに飾られるようです」と話していました。

Point
 大変だったけれど、「やらされた」ではなく、「自分たちでやり遂げた」という感覚をみなさんが持てたことが大きな成果です。それは、作業をしながらも、みんなの中で「目標」や「夢」が共有できていたからでしょう。だからこそ、手芸クラブなど新たな活動が生まれていったのです。支援者は、みんなで目標や夢を共有できるような働きかけをすることも大切です。

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双葉郡6町計9本のほか、いわき市社協、交流センターぶらっとの七夕飾りも浜風に揺れた2012(平成24)年の平七夕まつり

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全国から届いた千羽鶴を吹き流し部分に使ったいわき市社協ボランティアセンターの七夕飾り

取材協力・写真提供:シャプラニール、いわき市社会福祉協議会、大熊町社会福祉協議会

まとめ
 本事例は、「伝統行事への参加を切り口に、他町村からの避難者といわき市民との交流を図れないか」というNGOの着眼点と企画の良さ。そして、日頃から仮設住宅等の入居者との信頼関係をていねいに築いてきた社協の生活支援相談員の存在。この2つがうまくつながったことで成功したものと言えるでしょう。みんなが共感する魅力ある企画でなければ、人は集まりません。一方、いくらアイディアや企画は良くても、地道に訪問活動を行い一人ひとりと関係を作って来た生活支援相談員の呼びかけなしでは、一部の人だけの参加にとどまっていたでしょう。被災・避難者を支援している人や団体はさまざまです。互いの特長を生かし合い、よりよい連携・協働を!

(筒井のり子)

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