事例2 借上げ住宅で暮らすみなさんが集まる場づくり | はあとふる・ふくしま

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避難者への生活支援とボランティア活動を伝えます

事例2 借上げ住宅で暮らすみなさんが集まる場づくり

本宮市借り上げ住宅で暮らす
みなさんが集まる場づくり

浪江町から避難を余儀なくされ借り上げ住宅で暮らしている
みなさんの地域支援として、本宮市社会福祉協議会(以下、本宮市社協)が
長年にわたり続けてきた給食サービスやサロン活動を応用。
避難先の本宮市社協と避難元の浪江町社協の主催で
会食会やふれあいレクリエーション大会を開催し、
同じ地域に生活する者として仮設住宅と借り上げ住宅のみなさん、
本宮市民も含め幅広くつながりを支援。
本宮市の人口と避難の状況本宮市の人口…30,828人(平成25年1月1日現在)
※本宮市HPより
仮設住宅に入居されている
浪江町の避難住民…612人(平成25年1月17日現在)
※福島県HPより
借り上げ住宅(一般・特例)・公営住宅に入居されている
避難住民……………184人(平成25年2月25日現在)
※本宮市社会福祉協議会より

ストーリー


同じ地域に生活する者同士つながりを
深めて行けるような支援をしたい

東日本大震災発災後、本宮市は浪江町と浪江町のみなさんを受け入れる協定を交わしました。避難先となった本宮市の社協は、避難元の浪江町社協からの情報提供により仮設住宅と借り上げ住宅に入居されているみなさんの状況を把握。2012(平成23)年は、市内に7カ所ある仮設住宅のサロン活動などの支援を行いました。

「時間の経過とともに浪江町社協も落ち着ついてきました。仮設住宅の訪問活動も順調に行われていましたので、次年度の避難先社協の支援は、市内に100世帯が暮らす借り上げ住宅の訪問を始めたいと考えました」と、本宮市社協生活支援相談員の根本光洋さん。

浪江町のみなさんのことは、浪江町の生活支援相談員が支援しているので、本宮市の生活支援相談員は個別支援以外でできることを展開して行こうと思ったそうです。

「落ち着いたと言っても浪江町社協は、まだまだ大変な状況でした。借り上げ住宅訪問について一から十まで相談していては、時間がかかってしまいます。そこで、避難元社協に負担をかけないように避難先の本宮市社協で案を練り、必要な書類ができたところで浪江町社協の事務局長に打ち合わせの申し入れをしました。今思うと見切り発車的なところもあったかもしれません。でも、そうしないと何も進まない状況でした」

2013(平成24)年春に行われた本宮市社協と浪江町社協との打ち合わせでは、「訪問の際の車はどちらの社協で出すか」「地図の準備はどうするか」など、細かいところまで話し合いました。その結果、車や地図など訪問に必要なものは浪江町社協が用意することになりました。

借り上げ住宅の訪問は、浪江町社協の生活支援相談員2名、本宮市在住の浪江町の民生委員1名、本宮市社協の生活支援相談員1名の計4名で同年6月1日から始まりました。

「訪問する度に思いを強くしていったのが集まる場の必要性でした。仮設住宅には集会所がありますが、借り上げ住宅で暮らすみなさんにはありません。そんな時にひらめいたのが『会食会』でした」

Point
避難して来られた方の情報の把握の仕方には、様々な場合があります。まず行政間、そして社協間での取り決めを確認する必要があります。

Point
「避難先」の生活支援相談員は、自らの町村の住民を支援する「避難元」社協(生活支援相談員)の意向を尊重しながら活動を行います。しかし同時に、避難されている方にとってプラスと思われることを具体的に提案していくことも大切です。「避難先」と「避難元」の生活支援相談員は、同じ目標をもつチームです。互いに提案しあい、役割分担しあいましょう。

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会食会「いきいき会食交流会」のチラシとプログラム。当初、参加費200円としていましたが、助成金をいただけることになり無料で開催しています

本宮市の生活支援相談員が「会食会を」と思いついたのには訳がありました。実は、本宮市社協には25年以上続く給食サービス活動があります。活動を支えているのは、調理ボランティアとして登録している16から17の団体です。食材調達や配膳など、さまざまな人や団体がコラボレーションしながら月2回の配食サービスと月1回の会食会を実施しています。そうしたことから、いつでも食事を届けられる体制が整っていたのです。加えて年齢性別不問で食事をしながらいろいろなお話しができる会食会は、誰でも気軽に参加できるプログラムだということを生活支援相談員がよく分かっていました。

「私がボランティアコーディネーターとして活動していた時も、さまざまシーンでよく会食会を開いていました」

今回の時間配分やプログラムは、毎月1回本宮市内で開催している『高齢者の食事会』とほぼ同じ流れ。通常の給食サービス活動に借り上げ住宅で暮らすみなさんのための会食会が加わったという形なら無理なくできると思ったそうです。

「会食会で同じ本宮市に生活する者同士つながりを深められるといいなと思いました。早速、本宮と浪江の両社協が主催する会食会のチラシを作り訪問活動で配布しました」

Point
平常時からボランティア活動が活発で、いろいろな企画があり、多様な団体が協働できている地域は、災害時の避難者支援においてもその力が発揮されることがわかります。多様な人々の参加を支援するコーディネーターの役割は、平常時からとても重要です。

「やっぱり本宮で暮らしていたんだね」
食事をしながら弾む会話

本宮・浪江の両社協主催の第1回「いきいき会食交流会」は、震災から1年4カ月後の同年7月6日、本宮市民元気いきいき応援プラザ「えぽか」で開催されました。当日は、24人が参加し、本宮市と浪江町の保健師2名による血圧測定の後、レクリエーション、避難先「本宮市」を知るグループワーク、食事などを楽しみました。

参加されたみなさんの「意識調査」も兼ねて行われたグループワークには、住み慣れない土地で「今、困っている事」や「不安に思っている事」などの意見を直接出していただき困り事や介護など、問題をより早く発見し対処したいという願いが込められていました。ファシリテーターは、本宮市社協の宇山利弘さん(社会福祉士)が務めました。グループワークの意見交換では、「のびのびとパークゴルフがしたい」「友達がいなくて寂しい」「前の暮らしを思い出す度、悲しくなる」などの声が出され、参加されたみなさんと関係者で思いを分かち合いました。

調理は、本宮市赤十字奉仕団の方々が担当しました。食事をしながら「やっぱり本宮で暮らしていたんだね」という声があちらこちらで聞かれ、生活支援相談員は「借り上げ住宅の暮らしって、本当に情報が少ないんだな」と思ったそうです。

7月の会食会がよほど楽しかったのか「次は?」という声が上がり、9月28日には「いきいき交流いも煮会」を開催することに。2回目の会食会には、23人の方が参加し、レクリエーションや本宮幼児クラブの子どもたちの元気な歌とダンスを楽しみました。

Point
みんなが楽しく集う場は、実は支援者にとっては情報収集/ニーズ把握の場でもあります。個別に「何か困りごとはないですか?」と尋ねても、たいていの人は「大丈夫です」と答えるでしょう。しかし、安心できる雰囲気の中でのおしゃべりで、いろいろな「声」が出されます。こうしたグループワークをうまく取り入れることは大切ですね。

Point
2回目の会食会には「幼児クラブ」の子ども達が参加。調理も1回目とは違う団体が行っています。このように、地域のいろいろな団体(社会資源)を知っているのは強みです。多様な人や団体に声をかけ、いい意味で巻き込んでいく力(=コーディネーション力)はこれからますます重要に!

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本宮幼児クラブの子どもたちとレクリエーションダンス♪

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2回目の会食会の調理は、本宮市婦人団体連合会のみなさんが担当しました。具だくさんの煮汁に参加者は大喜びでした

仮設住宅の集会所や借り上げ住宅のみなさんの
会食会で語り合える共通の思い出を作りたい

同年10月19日、本宮市総合体育館を会場に本宮・浪江の両社協の主催で開催された「第1回本宮市・浪江町 ふれあいレクリエーション大会」(以下、レク大会)も、借り上げ住宅の訪問活動をしながら考えたことでした。

「仮設住宅が7カ所で7チーム。借り上げ住宅で1チーム作って8チームにすれば対抗戦ができる」と思いました。
仮設住宅の集会所に楽しい話題を提供したいという思いもあったそうです。仮設住宅のサロン活動で集会所に行くと中はガランとしていて何もないところがほとんど。

「震災前から本宮市内で開催している『ふれあいサロン』を思い出してみると、集会所には地域で開かれた運動会やイベントの賞状や記念写真などが飾ってありました。『この写真は何?』と尋ねると『このときはねえ…』なんて、思い出話がいろいろ出てきて楽しかったんです。仮設住宅の集会所や借り上げ住宅のみなさんの会食会でも、そんなふうに語り合えるものを届けたいと思って企画しました」

レク大会の準備は、同年7月に本宮市社協、浪江町社協、本宮市、浪江町、本宮市ボランティア連絡協議会、仮設住宅の自治会のみなさんなどで実行委員会を組織してスタートしました。「毎年、本宮市老人クラブの皆さんが運動会を開催していたので、玉入れなどの道具も借りられるはず。なんとかなる」と思いました。

チラシを配布しながら借り上げ住宅の方には「仮設のみなさんも来るレク大会があります。ぜひ、参加してください」と、声をかけました。並行して仮設住宅の自治会長にも「自治会の団結につながりますので、ぜひ!」とレク大会の魅力を伝えて参加を呼びかけました。

「苦労したのはチーム編成でした。7カ所ある仮設住宅のうち1カ所だけ『参加できない』というお返事で悩みました。本宮市ボランティア連絡協議会にレク大会の会場の設営、用具の出し入れのスタッフだけでなく選手も募集するお知らせを出すと100人の方から参加できると返事をいただきました。みなさんのおかげで『本宮ボラ連チーム』が作れたので予定通り8チームの対抗戦が可能になりました」

チームの団結を高める仕掛けとして「仮装大賞」と名付けたプログラムも考案しました。「これは、各チームの選手が仮装のパーツを持って走りモデルに装着。10人で仮装を完成させるという競技です。8つのチームが前もって準備をすることでチームの団結を高めたいと思い事前にお願いして回りました」

Point
「共通の体験」があると仲間意識が強くなり、もっと話が弾むのでは? しかもお客さんとしてではなく「自分が主人公」ならなおさらでは? こうした視点は、一人ひとりの意欲を引き出す企画を考える際のポイントです。

Point
いくらアイディアがよくても、一人だけで進めたのではいいものにはなりません。関係者に参加してもらって実行委員会を組織したのは、大切なことです。

Point
チラシを作ってただ配るのではなく、手渡しながら「思い」を語っているのがいいですね。

Point
レク大会に1カ所だけ参加できなかった仮設住宅は、「とても元気だった方が急に倒れられたので、にぎやかな場所への参加ははばかられる」というのが理由だったとのこと。
一方、レク大会の前々日に突然の不幸に見舞われたけれど、予定通り参加された仮設住宅もあったそうです。被災3県で災害関連死がもっとも多いのが福島県です。死をどのように受け止めるかは人によってさまざまです。仮設住宅のリーダーは、難しい判断を求められる場合があるということを理解しましょう。

総勢約400人をひとつにした本宮・浪江の
両社協主催「ふれあいレクリエーション大会」

努力の甲斐あって大会当日、会場内は人、人、人。本宮市に避難されている浪江町のみなさん、本宮市ボランティア連絡協議会のみなさん総勢約400人が集まりました。来賓として浪江町長、本宮市長も参加。準備体操は、浪江町でレクリエーションダンス体操の指導者として活躍されていた佐藤さんご夫妻が担当しました。

大玉ころがしや玉入れ、宝拾いやチーム対抗リレーなどのプログラムが始まると、会場内は笑顔と大きな応援にあふれました。最高に盛り上がったのは、最終種目の男女混合リレーでした。それぞれのチームを一丸となって応援する声が会場中に響きわたり、勝敗が決まると大きな歓声と拍手が湧き起りました。

「リレー直前、借り上げチームから『借り上げ住宅のメンバーだけで走りたい』と言われた時は、突然のことでびっくりしました。もともと借り上げチームは、人数が少なかったので本宮市民が混じっていました。7月と9月に開催した会食会で絆を深めてこられたみなさんが、レクリエーション大会の応援席でさらに絆を強くされたのでしょう。その気持ちをバトンをつなぐことで表現したいんだとすぐにわかりました」

仮設住宅と借り上げ住宅のみなさん、そして本宮市民をひとつにしたレク大会の帰り際、参加された方が「来年は仮装大賞のモデルをやりたい」「次は、リレーに参加したい」など、すぐに来年の話をされていたこともうれしい手応えでした。

本宮・浪江、両社協では、今後も2カ月に1回のペースで会食会を継続していくそうです。さらに本宮市社協は、大玉村社協の発案で二本松市、大玉村、本宮市内の借り上げ住宅で暮らしている大熊町のみなさんの「茶話会」の開催にも関わっていくそうです。

Point
2回の会食会があったからこそのレク大会の成功と言えるでしょう。どんな企画もその日その時だけで終わるのではなく、次の何かにつながっていくように、参加者の気持ちを受け止め盛り上げていきたいですね。

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本宮市石神第一仮設で生まれた「ふるさと浪江」みんなで一緒におどり隊のメンバーを中心にした自由参加のプログラム「ふるさと 浪江踊り」

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大歓声を受けて走るリレー選手

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大爆笑!仮装大賞

取材協力・写真提供:本宮市社会福祉協議会


まとめ
第1章で述べたように、東日本大震災(とくに福島県)では、県内に避難している方の6割以上が民間借り上げ住宅で暮らしています。その中には、「情報が届かない」「何日も人と話さないことがある」など、孤独や孤立感を深めている方々もたくさん存在します。しかし、点在しているため個別訪問には限界があり、また仮設住宅の集会所のような集う場もありません。
そこで、「避難先」社協の生活支援相談員が大きな役割を果たしたのが本事例です。平常時にさまざまなボランティアの参加を得て実施していた「高齢者の食事会」の内容と手法を、借り上げ住宅入居者向けに応用したのです。避難者同士のつながりはもちろん、避難者と地元住民のつながりも意識した実践から多くのヒントが得られます。

(筒井のり子)

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