津波で深刻な被害を受けた海岸林の再生を目指して | はあとふる・ふくしま

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津波で深刻な被害を受けた海岸林の再生を目指して

2015/04/28
 

市民が安全に気軽に楽しく利用できる里山を市民の手で作りたい

NPO法人いわきの森に親しむ会は、2001(平成13)年に開催された「うつくしま未来博」の「森のネイチャーツアー&森の学校」のいわき版をぜひ!と願った有志によって設立されました。理事長の松崎和敬さんは「未来博では、どこにでもある裏山にネイチャーツアーコースを設計して多くの参加者を楽しませました。市民の手で里山を再生して、皆さんが安全に気軽に楽しく利用できる仕組みを作りたいと思ったのがきっかけです」と話します。以来、松崎さんたちは、身近な自然の中でその不思議に出合ったり、自然の仕組みを知ったり、さまざまな自然の働きに気づくことが、環境問題の本質を理解する力になっていくと考え、身近な自然を活かした環境教育やより良い状態の自然をつくるための森の手入れなどを行ってきました。
2012(平成24)年6月からスタートした海岸林の再生活動は、NPO法人トチギ環境未来基地(※)から協力の要請を受けたことがきっかけでした。
「当初、彼らは津波被害木を活用して仮設住宅向けのプランター作りを考えていました。その支援が最初の協働活動でした。その後、彼らが『苗木forいわき』プロジェクトを立ち上げて津波で深刻な被害を受けた海岸林の再生を目指す活動を始めたことから現地のパートナー団体として現在に至っています」


NPO法人いわきの森に親しむ会 理事長 松崎和敬さん NPO法人いわきの森に親しむ会 理事長 松崎和敬さん
▲ NPO法人いわきの森に親しむ会 理事長 松崎和敬さん
※NPO法人トチギ環境未来基地…益子町を拠点にしながら長期間、若者がチームとなって環境保全活動に取り組むプログラムを行っている団体。2011(平成23)年6月、いわき市内に「フクシマ環境未来基地」を立ち上げ、全国から参加してくださるボランティアの皆さんとともに復旧・復興支援活動に取り組んでいる。現在は、いわき市三和町下三坂で地域の人たちと一緒に地域づくり、環境保全活動を行いながら海岸林の苗木を育てたり復興支援活動を行っている。


江戸時代から人々の命と財産を守ってきた海岸林

いわきの海岸林は、今から400年ほど前に当時の平藩の御殿様が整備したものです。江戸時代から育まれてきた海岸林は、津波の被害を軽減させ、地域の人々の命や財産を守ってきました。しかし、2011(平成23)年3月11日に大きな被害を受けました。
林野庁の資料によると福島県の海岸林の被害面積は292.8ヘクタールで、そのうちの217.4ヘクタールが深刻な被害を受けました。いわき市では、被害が深刻な海岸林の面積は、当初1.4ヘクタールでした(その後年々、面積が増加しています)。単純計算でいわき市の海岸林の再生には、1万4,000本の苗木が必要となる一大プロジェクトです。
松崎さんたちは早速、国民参加による森林整備の一つで、いわき青年林業会議所が「ふれあいの森」の協定を結んでいた場所を植林の場所として準備を始めました。
「いわき市の北部、四倉から新舞子までなんですが、そこを植林の場所として枯れたマツを伐採し、ヤブを刈り払い、草刈りをして植える準備を進めると同時に苗木の確保に奔走しました。普通のクロマツではなくて『抵抗性』のクロマツじゃないとだめだというので、入手先を見つけるまでが大変でした」


2012年5月の新舞子浜(写真提供:NPO法人いわきの森に親しむ会) 2012年5月の新舞子浜(写真提供:NPO法人いわきの森に親しむ会)
▲ 2012年5月の新舞子浜(写真提供:NPO法人いわきの森に親しむ会)


植えた後も通うと森と人の関係がグンと近くなる

『苗木forいわき』プロジェクトのパートナー団体として松崎さんたちは、主に「地ごしらえ」「植林」「管理」などを担当しています。地ごしらえは、被害を受けた海岸林に出向き枯れてしまったマツを伐採し片づけたり、ヤブになってしまったところを刈り払いし、草刈りもして植林の準備をする作業です。「植林」は、寄付金を財源に抵抗性のクロマツ(2年生)を購入し、いわき市や栃木県内の小学校や福祉施設などで半年から1年育てていただき40センチくらいになったクロマツを植える作業。「管理」は、保育のための草刈りなどです。これらを企業・組合・学校などグループ単位で参加していただきながら海岸林が本来の機能を取り戻していくまで続けていこうというのです。
「とにかく息の長い活動なんですよ」。植林後、夏の下草刈りは欠かせません。約5年間は、草に負けないように植えたクロマツの周辺の草を刈ります。生長すると1メートル以上になるススキよりもマツが大きくなると光が当たるようになるので、それまでは人の手が必要です。松崎さんは「植えるのは簡単ですが、その後が大変なんです」と続けます。
「ボランティアの皆さんには、1回でもいいから夏の草刈りに来てほしいと思っています。植えるだけでなく、どんなふうに育っていくのかも見ていただけると森と人の関係もグンと近くなるはずです。3年の間に少なくても2回くらい。10人で植えたらそのうちの3人でもよいので草刈りに来ていただきたいと思っています。後は、私たちが管理しますので」


被害を受けた海岸林の整備(地ごしらえ)。首都圏や栃木などの企業、一般のボランティアの皆さんの協力を得て進めています。「安全確保に努めながら『参加して良かった』『楽しかった』『もう一度来てみたい!』と思ってもらえるような内容を心がけています」と松崎さん(写真提供:NPO法人いわきの森に親しむ会) 被害を受けた海岸林の整備(地ごしらえ)。首都圏や栃木などの企業、一般のボランティアの皆さんの協力を得て進めています。「安全確保に努めながら『参加して良かった』『楽しかった』『もう一度来てみたい!』と思ってもらえるような内容を心がけています」と松崎さん(写真提供:NPO法人いわきの森に親しむ会)
▲ 被害を受けた海岸林の整備(地ごしらえ)。首都圏や栃木などの企業、一般のボランティアの皆さんの協力を得て進めています。「安全確保に努めながら『参加して良かった』『楽しかった』『もう一度来てみたい!』と思ってもらえるような内容を心がけています」と松崎さん(写真提供:NPO法人いわきの森に親しむ会)



植林の様子。40センチくらいなった3年生の苗を植えます(写真提供:NPO法人いわきの森に親しむ会) ●年間スケジュール●
①地ごしらえ(整備作業)…通年。6月~9月は、保育のための草刈りも行います。
②植林…11月~3月
③苗木の育成…4月~5月にかけでクロマツパートナーを募集します。
▲ 植林の様子。40センチくらいなった3年生の苗を植えます(写真提供:NPO法人いわきの森に親しむ会)


小学生や高校生など、現場にいけなくてもできる協力として「苗を育てる」ボランティアもあります(写真提供:NPO法人いわきの森に親しむ会) 小学生や高校生など、現場にいけなくてもできる協力として「苗を育てる」ボランティアもあります(写真提供:NPO法人いわきの森に親しむ会)
▲ 小学生や高校生など、現場にいけなくてもできる協力として「苗を育てる」ボランティアもあります(写真提供:NPO法人いわきの森に親しむ会)

海岸林の松枯れが止まりません

大震災から4年が経過し、海岸林の植林も7,000本に達した『苗木forいわき』プロジェクトですが、実は当初、予想もしなかった問題が浮上してきているそうです。
「海岸林の松枯れが止まらないのです。年々被害面積が増えています。新舞子浜だけで約25ヘクタールに増えてしまいました。震災の年は全体の3~4%だったのが、今では半分近く枯れてしまいました。樹高の高いマツが枯れています。原因はよく分からないのですが、1つは地盤沈下でマツの根っこが地下水に達してしまい根腐れを起こしているのではと思われます。もう1つはマツクイムシ。元気なマツは抵抗力がありますが、震災以降、弱っているところにマツクイムシでさらなるダメージで枯れてしまうのかもしれません。ほかにも酸性雨とか富栄養化なども考えられます」


海岸林再生事業の課題

海岸林再生事業の課題を松崎さんは「人材、資金的なものも含めた事業実施体制を確立していくことです」と話します。海岸林の再生は、10年以上続く息の長い活動です。しかも、今現在も松枯れが増えていていると言うなかで植える面積が増えると管理する面積も増えていきます。
「整備から植林、管理を安全に進めて行くためにも指導者の要請と人員確保は必要不可欠。『こんな空模様の時は止めた方がいい』とか『こういう風が吹くときは…』など、現場で身体で覚えるのが一番。本もありますが、現場にはかないません。私たちが培ってきた知恵やいろんな意味での安全管理をNPO法人トチギ環境未来基地やフクシマ環境未来基地の若い人たちにしっかりと伝えて行きたいですし、地元でこうした活動を支えていく人材も育てていきたいと思っています」
海岸林の再生事業『苗木forいわき』プロジェクトは、間もなく4年目に入ります。2015(平成27)年3月には「2015年春植林イベント」が実施され、4月4日(土)にも植林イベントが開催されました。今後のボランティア活動については、NPO法人いわきの森に親しむ会または『苗木forいわき』プロジェクト(http://naegi.jimdo.com/)までお願いします。


NPO法人いわきの森に親しむ会の活動拠点「湯の岳山荘」 NPO法人いわきの森に親しむ会の活動拠点「湯の岳山荘」
▲ NPO法人いわきの森に親しむ会の活動拠点「湯の岳山荘」

地図の赤い枠の中の周辺(新舞子浜周辺)で植林と管理を行っています(資料提供:NPO法人いわきの森に親しむ会)
▲ 地図の赤い枠の中の周辺(新舞子浜周辺)で植林と管理を行っています(資料提供:NPO法人いわきの森に親しむ会)


●取材を終えて●

「人間も動物だから森の中の生き物なんです。それなのに近年は、とくに自然から離れていると感じることが多いですねえ」と語る松崎さん。人の心を纏(まと)め、癒すだけでなく生きる力をくれる森。命の根源にある水を育み薬草も手に入る山の中では医者もいらない。それが1960年代以降、どんどん変わってしまったとも。すべてが有機的につながっている森や山の魅力を言葉で伝えることほど難しいものはないそうです。「現場で体験すれば、すぐにわかるんだけどね」。震災と原発事故以降、森づくりの活動はそれまで抱えていた課題に新たな問題が加わる形で難題が山積しました。そうした状況下にあってもNPO法人いわきの森に親しむ会の皆さんは、安全に配慮しながら今回ご紹介した海岸林の再生のほかにも「プロ野球の森の整備」「里山再生整備啓発事業」「ろうきん森の学校」などの事業も展開してこられました。今年度もさまざまな事業を開催していく予定です。ホームページに自然体験活動や観察会などの予定が掲載されていますのでぜひ、チェックしてください。
(井来子)


団体名 NPO法人いわきの森に親しむ会
代表者 理事長 松崎 和敬
設立時期 2001年10月
構成メンバー 正会員113人 家族会員17人 団体会員7団体
主な資金源 助成金など
所在地 〒972-8326 いわき市常磐藤原町湯の岳2 湯の岳山荘内
TEL&FAX 0246-44-3273 TEL&FAX 0246-44-3273
URL http://iwaki-mori.jimdo.com/  
E-mail yunodake@gray.plala.or.jp  
■県内外からの支援活動についての問い合わせや相談について
TELまたはFAXでお問い合わせください。
■現在、共に活動しているNPO法人、市民活動団体等
・いわき青年林業会議所
NPO法人トチギ環境未来基地
フクシマ環境未来基地
・いわき市内で活動している森づくり関係の団体

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