社会福祉法人 福島県社会福祉協議会 避難者生活支援・相談センター

還れる日まで心と身体の健康をサポートするオープンカフェ「癒しのサロン」(南相馬市)

2013/05/27
 

2012年1月に誕生したオープンカフェ「癒しのサロン」
南相馬市鹿島区内4カ所(※)の仮設住宅集会所を利用して開設されている「癒しのサロン」は、NPO法人つながっぺ南相馬(法人登記:2013年2月)が、2012年1月から始めたオープンカフェです。イベントなどが開催される日を除く毎日、午前9時半から午後4時半まで利用できるサロンには、同法人のスタッフが常駐しているほか、マッサージチェアや輪投げ、カラオケ、お茶とお菓子などの用意もあり、どれも無料で利用できます。しかも仮設住宅に住んでいる方々だけでなく、借り上げ住宅やほかの仮設住宅で暮らす方々も参加は自由。おおらかな雰囲気が魅力です。

※西町第一仮設住宅(124戸)、寺内塚合仮設住宅(174戸)、千倉仮設住宅(94戸)の3カ所は、日本国際ボランティアセンターからの支援。友伸グラウンド仮設住宅(138戸)は、中央共同募金会赤い羽根「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」の助成金を得て運営しています。

友伸グラウンド仮設住宅の「癒しのサロン」で寛ぐみなさん。県外の様々な支援団体から届けられるお菓子もみなさんの笑顔に包まれてうれしそうにしています。

▲友伸グラウンド仮設住宅の「癒しのサロン」で寛ぐみなさん。
県外の様々な支援団体から届けられるお菓子も
みなさんの笑顔に包まれてうれしそうにしています。



常駐スタッフの鎌田たつ子さん。ヨガや編み物教室の準備をしたり、みなさんの相談相手になったり大活躍 常駐スタッフの鎌田たつ子さん。ヨガや編み物教室の準備をしたり、みなさんの相談相手になったり大活躍

▲常駐スタッフの鎌田たつ子さん。ヨガや編み物教室の準備をしたり、みなさんの相談相手になったり大活躍


仮設住宅には、いつもそばに誰かがいる環境が必要
サロンを始めたきっかけを理事長の今野由喜さんに伺うと「いつもそばに誰かがいる環境が必要と感じたからです」と話してくださいました。今野さんは、自宅があった同市小高区で被災。津波にのまれながらも九死に一生を得て、その後「みなみそうまさいがいFM」を手伝うようになりました。「仮設住宅の集会所にラジオ用のアンテナを建てているときに考えたんです。僕自身も被災者なんですが、もっともっと被災者に寄り添う支援が必要だってね」。そこで今野さんは、2011年12月に任意法人を立ち上げました。「還れる日まで心と身体の健康をサポートする」というサロンの活動方針を自治会の方々に伝え、理解と協力を得て、だれでも気軽に立ち寄れるカフェ「癒しのサロン」をスタートさせました。

鹿島区友伸グラウンド仮設住宅集会所

▲鹿島区友伸グラウンド仮設住宅集会所


心身の健康維持をサポートする多彩なプログラム
サロンで、今野さんたちが特に意識しているのが「自立支援」です。「僕らには生活を再建していくという大きな目標があります。いつまでも与えられるという気持ちでいてはね…。切り替えていかないと」。四半期に一度のペースで開催している輪投げ大会やカラオケ大会は、自治会や住民のみなさんからお手伝いを募って一緒に運営するようにしているそうです。もちろん「心と身体の健康維持」も大切です。「私たちは、今もって自宅に帰れる日が分からないという状況に置かれています。戻れる日まで健康でいられるようにサポートしていくのがサロンの最大の目標ですからね」。
スタッフミーティングは、毎月1回欠かさず行っています。「イベントやボランティアの受け入れの調整をしたり、課題の検討もします。シリアスな問題については、抱え込まず自治会長や関係機関につなぐこともあります」。利用者のみなさんが楽しみにしているという毎月の予定表を見せていただくと、カルチャー教室の講師派遣を行っている同市の出前講座制度によるパッチワークや編み物教室や地元の皆さんの協力を得て開催しているヨガや太極拳室、歌謡教室、さらには地元の医師と作業療法士グループによる「ストレスに強い心を作る講座」まで、多彩なプログラムが組まれていました。

▲みなさんが楽しみにしているプログラムを伝える手書きの予定表


希望が揺らぐのが一番よくない。「モチベーションが下がってしまいます」
スタートから1年4カ月が経過したサロンには、笑顔が絶えません。「当初は、知らない人同士が暮らす仮設住宅で、コミュニケーションも難しい状況でしたからね」。サロンが始まり頻繁に顔を合わせるようになると、ずっと前から知り合いだったような和気あいあいとした空気が漂いだしました。「マッサージチェアやヨガで体調が良くなったという声も聞かれるようになったしね。生活支援相談員さんも仮設を訪問するときは、必ずサロンに立ち寄って情報交換して帰られます。それでもまだまだ安心するわけにはいきません。サロンに来ない人も心配ですし、課題は増える一方です」。
というのも南相馬市では、2012年4月16日に警戒区域指定が、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域に再編され、日中の自由な一時帰宅が可能になりました。「癒しのサロン」に通うみなさんは、そのほとんどが小高区に住んでいた方々です。「再編から半年くらい、家の周りの片づけや草刈りや部屋の掃除などで、結構みんな小高区に帰っていました。でも、実際帰ってみると電気は使えても水は出ない、流せないという状況。そうこうしている間に『いつ帰れるかわからないのに、家の中を掃除してどうするの?』という人も出てきました。希望が揺らぐのが一番よくない。それぞれの心のモチベーションが下がってしまいます」。

生活関連情報を提供する掲示板 学生のインタビューを受ける今野由喜さん
▲生活関連情報を提供する掲示板 ▲学生のインタビューを受ける今野由喜さん

寺内塚合仮設住宅では「折紙愛好会」も誕生し、みなさん意欲を持って制作に励んでいます。作品はサロンに飾ったり、展示会に出品することもあります

▲寺内塚合仮設住宅では「折紙愛好会」も誕生し、
みなさん意欲を持って制作に励んでいます。
作品はサロンに飾ったり、展示会に出品することもあります


1つ困難を解決しても、また次の困難がやってくる。まだまだこれから
なんとかみんなの気持ちを前向きにしたいと、今野さんたちは今年から新聞に掲載された生活関連情報を集会所の掲示板に貼り出すなど情報提供しながら、モチベーションの低下を防ぐ工夫を始めています。「西町第一仮設では、一坪農園『癒しの菜園』も開設しています。被災者の7割くらいが農業従事者か農業経験者。みんなプロだからね。畑に出ると生き生き。それに畑には育てる喜び、収穫の喜びもあるからね。とても喜ばれています」。ほかにも南相馬の子どもたちを3泊4日の旅行に送り出す活動や大人を対象にした日帰り温泉旅行、留学生との交流など、県内外のさまざまな支援団体と連携して元気がでるプログラムを企画したりしています。
「僕らは、いまもって先の見通しが立てにくい状況にあります。困難を1つ解決しても、また次の困難がやってきます。その都度、最善の方法を考えながら帰れる日までみなさんの心と身体の健康を支え続けます。まだまだこれからです」と今野さん。
つながっぺ南相馬では、手工芸教室や軽体操、被災者の体験を聞く(拝聴活動、メンタルケア、サロンスタッフとの協働など、期間を問わずボランティア活動の受け入れも行っています。問い合わせは、下記の通りです。

特定非営利活動法人つながっぺ南相馬
〒975-0032 福島県南相馬市原町区桜井町一丁目173-1 1号棟
http://www14.plala.or.jp/yamaki_farm/
TEL&FAX0244‐23-1770


※南相馬市鹿島区には、「やっぺ南相馬」のみなさん運営しているオープンカフェ「眞こころCafe」もあり、こちらは寺内第一仮設(81戸)、牛河内仮設住宅(150戸)、角川原仮設住宅(76戸)の集会所で開かれています。http://yappe-minamisoma.jp/

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