社会福祉法人 福島県社会福祉協議会 避難者生活支援・相談センター

福島市社会福祉協議会

2019/02/28
 

つなぐ・つなげる・つながる支援~地域と関わり生きがいのある暮らしを~


社協名 福島市社会福祉協議会
時 期 平成24年4月~



【背景】

  • 東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島市には沿岸部の市町村から約12,000人の方が避難した。現在は市内の仮設住宅、借上げ住宅(みなし仮設)と近年整備された復興公営住宅、福島市に再建した住宅などで生活している。福島市社協は生活支援相談員を配置して戸別訪問による見守り相談、サロン開催等の活動をしている。
  • 相談員が訪問をすると、避難によって仕事や趣味、友人との交流が続けられなくなり、自宅にこもりがちになっている方が多くいた。福島市社協では「何かしたい」「誰かと交流したい」と思いつつ、知らない土地ではきっかけを掴めずにいる方を、人や趣味と“つなげる”生きがいづくり支援を行っている。



【取り組み】

  • サロンで“つなぐ”
    福島市社協が開催するサロン『てとて』は、福島市に避難されている全ての方を対象にしている。避難で会えなくなってしまった知人との交流、同じ避難を経験した他の市町村の方との交流などさまざまな交流の場として開催。参加者は、相談員による訪問時の呼びかけ、避難元社協の呼びかけ、既存の参加者からの誘いでサロンを知り訪れている。

    サロンの内容は健康体操やものづくり、ボランティア団体などによる楽器の演奏など多彩。写真は福島市内のハンドベルの愛好団体の演奏の様子


    紙切り師の公演を観たサロンの後には、折り紙を使った紙切りを体験。相談しながら作業するうちに自然と交流が生まれます

    サロンでは専門職とのつなぎも行っている。サロンには毎回、心のケアセンターの職員にも参加してもらい、気軽に話ができる機会を作っている。血圧測定の時などに気軽に心身の不調や家族の悩みなどを相談できるので、今ではサロンでの相談を心待ちにしている方も多い。


    福島市社協が実施するサロン『てとて』のチラシ裏面には地域情報などを掲載。12月は初詣におすすめの神社を紹介した。
  • 体験型の事業で趣味と“つなげる”
    興味があっても何から始めて良いのか分からなかったり、一人ではじめる勇気がでないことを、社協のイベントで体験してもらう取り組みをしている。さらに、福島市やその他の団体が実施しているイベントや講座などへの参加も促し、関心を持ったことが実際の趣味や生きがいにつながるよう、地域の社会資源とつなげる活動をしている。

    ・これまでに、陶芸、フラワーアレンジメント、レース編み、そば打ち、料理の教室を開催した。陶芸やそば打ちは普段サロンに参加しない男性も関心を寄せ、参加している。講師は市内で教室を開いている方を招き、もっとやってみたいという参加者には実際の教室を案内している。

    ・体力づくりと、誰かと一緒に楽しむことの喜びを体験してもらうため、市内の森林でウォーキング会を開催した。家の中にいることが多く、歩くことが減っている参加者からは「みんなと一緒だと歩ける」と大変好評で2回目も開催した。


    ・社会資源につなげた例では、戸別訪問で「美味しいコーヒーを入れたい」という話を聞き、福島市が実施している市民講座をさがして紹介した。つぶやきを糸口に、相談員が後押しして行動につなげることで社会との関わりを持つきっかけにすることができた。

【工夫】

  • 「自分が楽しめないサロンは参加者も楽しめない」というモットーで、相談員自身も楽しいと思えるサロン作りをしている。また、同じ顔ぶれになりやすいサロンで初参加の方にも「また来たい」と感じてもらうため、同じ市町村の方に近い席や話上手な方に近い席を案内するなど、居心地良く過ごせるようにしている。
  • 体験教室の参加者やサロン参加者にアンケートを行い、ニーズに沿った体験イベントを企画している。内容は高齢者でも作業しやすい簡単なものにアレンジし、完成させる歓びや楽しさをギュと濃縮した体験をしてもらうことで、もっとやりたいと思う「その後」を意識した計画をしている。例えば陶芸では、初心者でも形が作りやすいよう粘土を小分けにして準備し、絵付けなどにより時間を使って楽しめるようにした。

【効果】

  • 人が集まる場所が苦手だった方が、「相談員さんがいるなら行ってみようか」とサロンに参加した。徐々に他の参加者とも打ち解けて、外に出て人と一緒に何かすることの楽しさを実感し、今では笑顔が増え苦手な写真撮影にも笑顔で応じてくれるようになった。取り組みが、閉じこもりを予防し、人や地域との交流に対する本人の意欲を引き出すことにつながった。
  • これまではサロンやイベントの際、市町村ごとにグループが別れてしまっていたが、最近は復興公営住宅が同じという理由で、別の市町村の方同士で一緒にサロンを楽しむケースが増えてきた。また、「同じ復興公営住宅の人に誘われた」と初めてサロンに訪れる人も増えている。人と人が“つながり”、市町村の垣根を越えた交流が生まれていることに、生活支援相談員も感動している。








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