社会福祉法人 福島県社会福祉協議会 避難者生活支援・相談センター

会津若松市社会福祉協議会

2018/03/14
 

避難先で暮らす高齢者が自分らしく生き生きと生活できるサービスに繋ぐ


社協名 会津若松市社会福祉協議会
時 期 平成28年4月
場 所 会津若松市内の借り上げ住宅

【背景】

  • 地震の被害が比較的少なかった会津若松市では、震災直後から避難者を受け入れた。会津若松市社協は生活支援相談員を配置して、避難元社協の相談員と仮設住宅や民間借り上げ住宅を訪問し相談支援を始めた。その後、頻繁に訪問できない避難元社協に代わり単独訪問するなど、避難元社協と連携しながら活動している。
  • 歳月の経過とともに避難者も高齢になり、気力も体力も低下して避難当初は自分でできていた身の回りのことができなくなるなど生活課題が表れてきている。
  • 避難者は周囲に頼る家族や知人がいないこともあり、地域とのつながりを作ることが重要になっている。

【取組み概要】

  • 原発事故で避難しているYさん(80代・男性)は足が不自由な妻と市内の借り上げ住宅に居住。本人は肺疾患があり酸素濃縮装置や酸素ボンベが欠かせないが、自分で車を運転して通院や買い物にも出かけていた。
  • 避難生活が5年目に入った頃から体力が落ち、一人での買い物が難しくなったと相談員に相談をした。それまでは訪問介護サービスを利用し買い物を代行してもらうなどしていたが、Yさんは「買い物に出かけると体はきついけれど自分の目で見て商品を選びたい」と思っていた。
  • 会津若松市社協の生活支援相談員は普段から“自立を意識した支援”をしている。Yさんが今できることを生かし支援するには会津若松市社協の登録ボランティアの協力が適していると考え、Yさんに勧めた。
  • ボランティアコーディネーターと協議して、Yさんの性格や病状を考慮し①ボランティア活動に慣れている、②Yさんと同じ男性、③いつでも駆けつけられるよう近くに住んでいる、④酸素濃縮装置や酸素ボンベの基礎知識を持つ、という条件を設けてマッチングをしてもらうことにした。

【工夫】

  • 買い物自体を代行してしまうと、外出する機会や自分で商品を選ぶ楽しみまで取り上げてしまうことになる。今回は時間の自由が利くボランティアの協力につなげることで、ボランティアが付き添いYさん自ら買い物に出掛けることができ、「自分の目で見て商品を選びたい」という希望を叶えることができた。
  • 支援する側はすぐにサービスに繋げたいと思うが、利用する側は他者を受け入れるまでに葛藤がある。閉鎖的で頑固な性格のYさんもはじめは消極的だった。しかし「一度断った手前『いいよ』というのが恥ずかしいのかもしれない」と考え、Yさんの気持ちが傾くまで、あきらめずに説得を続けた。
  • 訪問時にはボランティアの連絡先を大きく書いた紙を持参して、見えるところにさり気なく貼ってきたり、ボランティアの方に会ってみる事を勧めるなどボランティアとの距離を縮める工夫をした。
  • 親身に粘り強く対応することで相談員への信頼が深まり、相談員の話を聞き入れボランティアに会うことができた。


会津若松市社会福祉協議会 生活支援相談員

箭内仁恵さん(左)、玉木睦美さん


【効果】


Yさん

  • Yさんはボランティアに付き添ってもらい、車椅子を使用して体に負担をかけずに買い物を楽しむことができるようになった。
  • 「買い物でも通院でも何でもいいから呼んでくれ」という気さくな人柄のボランティアとの関係は良好で、買い物の付き添い、病院への送迎、雪かき、電球の交換など、Yさんの日常生活を助けてくれる存在となった。
  • 親しい人もいない土地勘もない避難先で困っていたYさんに、地域に頼れる人ができたという安心感が生まれた。
  • Yさんはあまり話をするタイプではなかったが、「買い物が楽になった」「医者にも連れて行ってもらった」「ボランティアさんがDVDを貸してくれた」など、相談員との会話も増えた。

生活支援相談員

  • 会津若松市社協では平成30年度に「ボランティア学園(※)」を開園する。
    避難されている方にも受講を促し、地域や地元住民と繋がるきっかけになればと期待している。



※ボランティア学園は、人を慈しむ、リスペクト(尊重)する心を育むとともに、ボランティア活動への関心と実践に向けた環境づくりを目的に平成30年5月に開園します。また、学園では、学びだけでなく、世代を超えた交流や仲間作りの「場」を創り出すとともに、実際の活動へつないでいく仕掛けなど、工夫を凝らした学園運営を目指しています。






会津若松市社会福祉協議会
地域福祉課 ボランティアセンター
鈴木美奈子さん


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