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NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福島

2017/08/31
 

ひとり親家庭の支援から、女性と子育て家庭と
幅を広げてホッとできる居場所を届けています


NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福島
理事長 遠野 馨さん


郡山市内に拠点を構える「NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福島」は、明るいひとり親家庭を目指して活動の輪を広げてきた団体です。1996年の発足時は「いいであいネットワーク」という名前でした。2006年に名称変更し、翌年NPO法人格を取得しました。2011年の東日本大震災では、ひとり親家庭だけでなく、災害弱者ともいえる女性と子育て家庭に対象の幅を広げ、現在も支援活動を続けています。理事長の遠野馨さんに女性と子どもに特化した支援の中身とこれからについて伺いました。


避難所にも私たちと同じひとり親家庭の親子がいるはず

NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福島(以下、しんぐるまざあず・ふぉーらむ)は、郡山市安積町に活動拠点を置く団体です。震災当時、遠野さんたちが最初に取り組んだのが会員の安否確認でした。「浜通り地区にも会員さんがいたので電話をしました。皆さんの無事が分かったので、次は避難所だと思いました。しんぐるまざあず・ふぉーらむの事務所と県内最大の避難所となったビッグパレットふくしまは、目と鼻の先。きっと困っているお母さんがいるはずと思いました」と、遠野さん。2011年3月末、ビッグパレットふくしま(以下、ビッグパレット)に出向くと、すでに大変な状況だったそうです。「最大時2,800人を収容していたビッグパレットは、通路やトイレの出入り口まで避難されてきた方で溢れていました。ひとり親家庭とか言っている場合ではありませんでした。すぐに女性と子どもに対象を広げて支援を始めました」。

すると早速、必要な支援物資の聞き取り調査や個別相談を始めると、下着がほしいという声がたくさん遠野さんたちに届きました。「皆さん着の身着のままで避難されていましたからね」。呼びかけると1,500人の希望がありました。遠野さんは、無謀を承知で女性下着の大手メーカーに電話をして直談判。ありがたいことに思いが通じ提供していただけたそうです。「お化粧したいという希望にも応えました。お化粧すると皆さん顔が明るくなりました。女性本来の元気を取り戻した…そんな感じがしましたね」。


郡山市内の女性団体と連携し「女性専用のスペース」の運営に協力

「子どもの夜泣きで、周りの人に迷惑をかけてしまっている」という若いお母さんの切ない思いにも応えました。余震もあり、怖くて夜中に泣き出す子どもがいても避難所には、なだめる場所がありませんでした。着替えや授乳するスペースもなかったことから、女性と子どもが安全に過ごせるスペースを確保しようと考えました。福島県災害対策本部と郡山市災害対策本部に出向き、郡山市内の集会所を使わせていただけないかとお願いしましたが、実現しませんでした。「ならばと、郡山市内の女性団体とうちとで避難所の片隅で『ホッとカフェ』を始めると同時に、郡山市内の女性団体と女性専用のスペースが欲しいという要望書を出しました。すると通ったんです」。

2011年5月、ビッグパレット内に設けられた女性専用のスペースは、県庁避難所運営支援チームが県男女共生センターに運営を依頼し、女性団体同士がボランティアで支援を協力するという形でスタートしました。「様々な相談にのったり、不足していた生活必需品を確保して届けたり、表札づくりや手芸などの手仕事ワークショップ、東京のボランティア団体の協力でハンドマッサージなども提供しました。原発事故の問題がありボランティアの皆さんは福島を素通りしてしまうという状況でしたので、ボランティアの交渉は、全部自分で調べて電話でお願いしました」。

▲2011年5月から8月末までビッグパレットふくしま内に設置された女性専用スペース。9:00~21:00まで着替えや授乳、化粧、談話、仮眠などに利用された (写真提供:しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福島)


出身地不問。誰でも利用できる「ふくしま女性支援センター」

2011年8月末、ビッグパレットの女性専用スペースは、避難所の閉鎖と共に役目を終えました。そこで、しんぐるまざあず・ふぉーらむは、茶話会とサロン活動の場を郡山市内の仮設住宅集会所に移して孤立化予防、コミュニティづくり支援を続けることにしました。翌年6月には、福島県からの委託を受けてビッグパレット近隣のビルに気軽に立ち寄れる場所「ふくしま女性支援センター」を開設しました。センターでは、電話相談や茶話会、子育て広場のほか、女性の就労支援ということで手仕事ワークショップなども開催。完成した作品の販売もしました。一貫して災害弱者といわれる皆さんに寄り添い、居場所づくりに尽力してきた遠野さんに居場所について改めて伺うと「年々、意味が変わってきています」と話してくださいました。「最初は、隣の声も筒抜けのような狭い仮設住宅から息抜きのように通って来られていました。センターができると、出身地を問わずおしゃべりやものづくりができることから、様々なお友達ができる交流の場となりました。センターは郡山市民も利用するので、話しをしながら避難されている人、地元の人、互いの気持ちがよくわかるようになっていきました。いろいろな人と交流を持つことも大事ですよね。センターがそういう役目を果たせて本当によかったと思っています」と遠野さん。

▲手仕事ワークショップの作品の一例。費用は実費。持ち帰りOK

▲しんぐるまざーず・ふぉーらむ福島の事務所で開催している手仕事ワークショップ。開催日など詳細は、電話でお問い合わせください (写真提供:しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福島)


精神的に疲れてしまった時に顔見知りと会える居場所
寛げる場所をこれからも届けていきたい

現在、しんぐるまざあず・ふぉーらむでは、ひとり親家庭を支援する団体本来の活動と、福島県からの委託により県内の被災者を支援する窓口として立ち上げた「ふくしま総合相談センター」(2013年~)、さらにひとり親家庭の子どものための学習支援・子ども食堂「こぶたのポッケ」(子どもの利用は無料)の3本柱を掲げて横断的に活動しています。

例えば、ふくしま総合相談センターで取り組んでいる農作業体験は、郡山市社会福祉協議会(以下、郡山市社協)が主宰しているお茶会のお手伝がきっかけでした。長引く避難生活で元気をなくしていた高齢夫婦の「土いじりがしたい」という話から畑探しが始まり、ようやく猪苗代の知り合いの畑にたどり着きました。以来、郡山市社協の協力の下、みんなでお借りした畑に出かけて行って野菜作りをしています。農作業体験は、ひとり親家庭の親子、避難で高齢世帯になり寂しい思いをしていたおじいちゃん、おばあちゃんらが一緒に活動できるとあって毎回和気あいあい。収穫した大根でタクアンを漬けたり、大豆を育てて味噌もつくりました。

「おじいさんやおばあさんにとっては、楽しい活動が生活面で活動意欲につながっていますし、同年齢の子どもを持つお母さんたちにとっては安心して話ができる交流として機能しています。何より畑仕事には、先人の知恵がたくさん詰まっているので、知るほどに子どもたちは、自信をつけ自己肯定感を高めています」と遠野さん。今後については「ビッグパレットの頃から支え合ってきた富岡町社会福祉協議会さんはじめ様々な関連機関と連携しながら、子どもも大人もホッとできる居場所を続けていきたい」と話します。

復興公営住宅や再建した自宅に引っ越しをしたとしても悩みはつきもの。精神的に疲れてしまったときに顔見知りと会える環境、ホッとできる居場所があれば元気になれますよね。ちなみに富岡町社協から依頼を受けて開催してきた手仕事ワークショップなどのサロン活動支援は、現在も続いています。なかでも写真のタイルコースターづくりは「夢中になれる」と、昨年から好評を博しているプログラムで、これまでに中通りやいわき市内の仮設住宅集会所にも出向いて開催してきたそうです。生活支援相談員の皆さんで「ぜひ、うちの町でも」と思われた方は、郡山市・富岡町社会福祉協議会に電話をすればしんぐるまざあず・ふぉーらむに繋いでもらえます。互いに協力しながら安心して、語り合える居場所を届けて続けていきたいですね。

▲農作業でリフレッシュ! 左2017年7月7日、右2017年8月8日 場所:猪苗代(写真提供:しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福島)

▲サロン活動支援、手仕事ワークショップの作品の一例。色もカラフルな「タイルコースター」



▲子どもたちの居場所として2016年に誕生した「こぶたのポッケ」。子ども食堂と学習支援に加えて、若いお母さん同士の交流の場としての機能も併せ持つ。利用を希望される方は、電話でお問い合わせください



■連絡先■

NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福島
〒963‐0111
福島県郡山市安積町荒井字方八丁65‐1山口ビル1F
理事長 遠野 馨
TEL&FAX024-983-8360
E-mail singurumm@yahoo.co.jp
URL http://www.smff.jp/


■取材を終えて■

避難してからずっと外出しようとしなかった90代の母親の身を案じた娘さんが、出身地を問わないふくしま女性支援センターなら母に合うかもしれないと一緒に来られた後、ワークショップで覚えたクマのぬいぐるみを作ってはお友達にプレゼントして喜ばれて生きがいになっているという話。

ひとり親家庭の子どもたちは、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に暮らしてない子が多く、一方で避難されているお年寄りの方々は、以前は大家族でくらしていたけれど今は1人暮らしだったり、2人暮らしだったりしていることから農作業体験は、双方にとっていい時間になると言う話。

エピソードの一つ一つにNPO法人しんぐるまざーず・ふぉーらむ・福島の大らかな愛に包まれて、癒されていく様子が目に浮かぶようでした。個々を大切にした支援の組み合わせと継続が、避難されている方やひとり親家庭の孤立化を防ぎ、地域とのつながりを育んでいくのですね。

(井来子)


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